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minca 栃木レザー シューホーン

 鳴呼、これは詫びなきゃならんかな。手にした瞬間ふと思った。

 何に対して?

狭い意味では、まあ栃木レザーに対してだろう。そして延いては「国産」というものに対してである。


 栃木レザーとそれを用いた一連の製品群に、これまであまり目を向けてこなかった。食わず嫌いと言われても仕方ないが、素朴とか国産とかいう形容詞で脚色された野暮ったさが好みではなかったのである。

 だが、このプロダクトには鳥渡思うところがあって手に入れた。栃木レザー云々が理由ではない。素材は金属で、カバーで覆えるタイプ、という条件で靴べらを探していて、偶然見つけたのである。黒革に真鍮。直感的にこれは最近愛用のブリーフケースに合うと思ったのだ。


 早速届いて梱包を解き、手に持った瞬間に驚いた。これは想像以上に良い物だ。

 革は厚みがありつつもしなやか。そしてしなやかでありつつ、同時にしっかりとしているので、靴べらとして使用する際にも頼りない感じはしない。握った時の手に収まる感じが抜群に良い。

 コバの処理も丁寧。こういう細かな部分の端正さがこの製品の美点である。真鍮と厚みのある革という、一歩間違えば野趣に寄るような組み合わせからも品位が漂う。これなら隠さなくていい。いや、隠したくない。目論見通りオンでも使えそうだ。



 革と真鍮からなる美しいキーホルダーであり、靴べらにもなる優れ物、とでも言おうか。

実と美の両立は、僕の最も好むところである。


 最近、良い物は良いとひしひしと感じる。国籍に貴賎は無い。舶来品を以て貴しと為す価値観の、私的な終焉が近付いているのかもしれないな。

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